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「認知症の薬物療法 重症でも投与可能に」(2008年6月掲載)

下村 辰雄(リハビリテーション科):秋田魁新報 2008年6月23日掲載

記憶障害や言語障害といったアルツハイマー型認知症の中核症状は、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの減少が原因で生じると考えられている。そのため、アセチルコリンが分解されるのを妨げるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が開発された。

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬には何種類かあるが、国内で認可されているのは塩酸ドネペジル(商品名アリセプト)だけ。中核症状の進行を遅らせることが主な効果で、はっきり効果が分かりづらい場合が多い。しかし、患者によっては積極的にデイサービスに行くようになったり、以前のように家事を行うようになるなど意欲の改善が見られることもある。さらに投与後数年にわたって、知的機能を維持できる可能性もある。短期間で大きな変化がないからといって無効と判断し、投与を中止するのは避けるべきだ。

情動が安定して周囲に気を配るようになったり、活動的になったときが、その患者にとって最適の用量と考えられる。それを判断するには家族ら介護者から、日常生活の様子を細かく話してもらう必要があるので協力してほしい。

また、しばらく投与を続けると怒りっぽい、落ち着きがない、徘徊がひどいといった症状は鎮まることが多いが、ある程度たっても改善されず、介護の負担が増したと感じたら遠慮なく専門医に相談してほしい。

従来、アリセプトの使用は軽度から中等度の症状の患者が対象だったが2007年8月に重症患者への適用も認められ、従来の2倍までの量が投与できるようになった。

一般的には軽度から中等度の患者では一日当たり3ミリグラムの投与から始め、1週間から2週間後に5ミリグラムに増やす。初めに3ミリグラムの投与をある程度続けて体を慣らすことで、吐き気や嘔吐などの消化器系の副作用が抑えられる。重症患者も3ミリグラムからスタート。1週間から2週間後に5ミリグラムに切り替え、副作用などの問題がなければ4週間後には10ミリグラムに増量する。もし、食欲不振や体重減少が続くようなら5ミリグラムに減量する。効果が期待される一方で、副作用に対する一層の注意が欠かせなくなっている。

秋田魁新報 2008年6月23日

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