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精神科の薬の副作用(2010年10月掲載)

2010年10月

 精神科診療では、薬のことが話題になることが多いと思います。最近は、心理面の分析やそれに対する働きかけをおろそかにして、むやみと薬を出す傾向が一部の精神科医に見られるようです。それについての批判が新聞記事になったりします。しかし、精神科においては、適切な薬を選んでそれを服んでいただくことが必要になることが多く生じます。精神科の薬は次のような特徴があると思います。

多くの場合、適切な薬を選べば非常によく効く 不愉快な副作用が多い 量やくすりとの相性に個人差がある  今回は、代表的な副作用をご紹介します。 大きく分けて次の3つに分けて考えると整理しやすいと思います。

  1. 鎮静
    抗不安薬、睡眠薬などで目立ちやすい副作用です。これは脳の活動にブレーキをかける作用です。多くの場合、脳が過剰な活動状態になっていることが病気と関係ある場合が多いと思います。その場合、バランスよくブレーキをかけるのは病気を改善することに役立ちます。しかし、時々、ブレーキがかかりすぎることがあります。そうすると、ねむけ、ふらつき、注意散漫、一時的もの忘れ(注意散漫による)などが生じます。これは本来の作用が過剰になって出現するもので、薬の作用上、全くゼロにするのは難しいと思います。いかにして減らせるかの工夫が必要です。
  1. 自律神経系副作用
    抗うつ薬などで目立ちます。精神科の薬のかなりの部分は脳の中の「神経伝達物質」というものに働きかけます。ところが、本来の目的とする「神経伝達物質」が複数の働きを持つ場合や、製薬技術上の限界より、余計な神経伝達物質にまで影響を及ぼす薬しか開発できなかった場合は、口のかわき、便秘、立ちくらみ、尿の出にくさなどが副作用として生じることがあります。これに対しては自律神経系を調節する薬を併用して服んでいただき、副作用を軽くするように工夫することになります。
  1. 錘体外路系副作用
    抗精神病薬で目立ちます。抗精神病薬は本来、脳の中のドパミンという物質の働きを抑えることにより作用しますが、この作用そのものから副作用が生じます。例えると、脳の中のA地点でドパミンが過剰になり、症状が出ている場合に抗精神病薬を服むとA地点のドパミンは丁度よくなりますが、薬は脳全体に働くために、B地点の丁度よかったドパミンの働きも減ってしまい、それで副作用がでる形です。手のふるえ、筋のこわばり、足のもそもそ感などがでます。出来るだけ、体質と合った副作用の出にくい薬をさがしていくことになります。

紙面のゆとりが無くなりました。薬の話は別の機会にまた取り上げたいと思います。

図:精神科の薬の副作用

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