患者の皆様へ


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運が悪かっただけ(2013年2月掲載)

精神科の病気も色々ありますが、病気で苦しんでいらっしゃる方と毎日お話ししていて気になることがあります。それは、精神病などにかかった方が「自分に何か落ち度があってなったのではないか」と思い、苦しんでいる方が多い点です。病気の症状で苦しみ、病気の療養上の苦労で苦しみ、さらに、自分を責めて苦しむ、これはとてもつらい体験です。

しかし、精神科医の立場から言うと、これは無用の誤解であり、少なくとも自分を責めて苦しむ必要は無いということになります。精神病を始め、精神科の病気のほとんどは、偶々、運が悪くてかかってしまうものだと思います。体質的ななりやすさが関係する場合はあります。発病しやすい年齢が関係する場合もあります。ストレスが関係していると考えられる場合もあります。しかし、これは個人の努力ではどうにもならないことだと思います。これらの条件が偶々重なってしまった(他の条件も色々あると思います。精神科の病気に何故なるかはまだ十分にわかっていません)人は「運悪く」病気になってしまい、不利な条件が重ならなかった人は自分がそのような危険にさらされたことも気づかず、御本人なりの人生を一生懸命生きていく、どうも、真実はこのあたりにあるのではではないかと思います。

この文章を読んでいる方にお願いします。健康な方は、精神病などにかかった人に落ち度はないことをご理解ください。そして、もし、「自分が悪いからそのような病気になるのだ」という偏見を持っている人がいれば、それは間違いであることを柔らかく教えてあげて下さい。また、実際に精神病で苦しんでいる方にお話しします。何故、病気になったのか、それは十分には解明されていません。しかし、少なくとも本人に落ち度があって病気になる訳ではありません。自分を責めないで下さい。真面目に毎日の生活を一生懸命行きている人でも運が悪いだけで病気になることはあり得るのです。苦しいことが多いと思います。精神科の病気にかかり療養生活を送ることはつらいことです。無理して明るくふるまえとも言いません。ただ、少なくとも、「自分が悪いので病気になった」と自分を責めることはやめて下さい。それは事実と異なるからです。病気になったことをなげく、療養生活の苦しさをなげく、それは当たり前ですのでいくら嘆いてもよいと思います。しかし、自分を責めることだけはやめて下さい。

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