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リハセンだより第13号(2001年10月発行)

痴呆をきたす疾患:新規に開設された開放型痴呆病棟(6病棟)の現況

リハビリテーション科:下村 辰雄

痴呆を生ずる病気には種々のものがあり、総称して痴呆症あるいは痴呆性疾患と呼んでいます。

痴呆症は単一の疾患名ではなく、状態名であることは十分に留意する必要があります。痴呆の原因となる主な疾患には、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、レビー小体を伴う痴呆、皮質基底核変性症や進行性核上性麻痺などの変性疾患、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、脳腫瘍、慢性硬膜下出血、頭部外傷や正常圧水頭症などの脳外科的疾患、神経梅毒などの脳の炎症性疾患、アルコールなどの中毒性疾患、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、ビタミンB1欠乏症などの代謝性疾患があります。痴呆症はその種類により、

  1. 根本的に治癒や予防ができるものがあること、
  2. 適応となる治療法が異なること、さらに、
  3. 根本的な治療法のない疾患であっても特徴的な認知機能障害や精神症状のパターン・神経症候の有無・進行速度が異なり、それぞれの疾患に必要な介護やリハビリテーションの内容が異なる、

などが挙げられ、このことから厳密な鑑別診断が必要となります。

これらの痴呆症の正確な有病率や発症率を知るためには大規模な疫学調査が必要であり、本邦においても痴呆全体およびアルツハイマー病と血管性痴呆については、繰り返し疫学調査が行われています。これらの疫学調査の結果では、65歳以上人口における痴呆全体の有病率は約7パーセント程度で、1980年以降の報告ではアルツハイマー病と血管性痴呆はほぼ同数かアルツハイマー病の報告が多いようです。また、アルツハイマー病の年齢別の有病率を見ると65歳から70歳までは1パーセント程度であるのに対し、85歳をこえると5パーセント以上と加齢とともに有病率が増加することが示されています。他の痴呆性疾患に対する疫学調査は今まで行われていないため、それらの正確な有病率については不明です。

大まかな頻度の参照のために、6病棟が開設された2001年6月から2001年9月までに入院精査した50名の内訳を下に示します。

健忘症候群を主徴とした入院患者が10名で、前交通動脈瘤術後例が4名、ビタミンB1欠乏症によるコルサコフ症候群が2例含まれていました。

ビタミンB1欠乏症は病初期であれば治療可能なので、特にアルコール多飲、偏食、胃手術、体重減少例などで急性の健忘症候群を呈した場合には留意する必要があります。

痴呆症と診断された入院患者は40名で、アルツハイマー病が圧倒的に多いのですが、前頭側頭葉変性症、レビー小体を伴う痴呆、皮質基底核変性症などの変性性痴呆患者も少なからず存在しました。記憶・見当識障害を主徴とするアルツハイマー病、常同症状や脱抑制などの行動異常を主徴とする前頭側頭葉変性症、認知機能の変動、幻視、誤認妄想やパーキンソニズムを主徴とするレビー小体を伴う痴呆、上肢の拙劣症、失行、パーキンソニズムや不随意運動を主徴とする皮質基底核変性症では、それぞれの疾患に必要な介護やリハビリテーションの内容も異なります。このことを考慮しながら、種々のリハビリテーション、ケア(家族指導、介護者教育、介護負担の評価、社会的資源の利用など)など、痴呆症に対する総合的な取り組みを行っています。

2001年6月から9月までに6病棟で入院精査した50名の(表1)

疾患名人数
痴呆症40名
アルツハイマー病25名
前頭側頭葉変性症6名
血管性痴呆5名
レビー小体を伴う痴呆3名
皮質基底核変性症1名
健忘症候群を主徴とする疾患10名
前交通動脈瘤術後4名
ビタミンB1欠乏症2名
その他4名
合計50名

2001年11月「梨狩り、行事について」

リハセンに入院している患者さんの場合、長期間の入院を要する方が数多くいらっしゃいます。その場合、入院期間中に社会生活から遠ざかってしまうため、社会復帰に苦労することがあります。そこで、疾患そのものの治療だけではなく、疾患によって生じた能力障害や社会的不利も含めた対応を行う必要が生じてきます。

このような観点に基づいて、当センター精神科ではリハビリテーションの一環として、入院では作業療法やレクレーションを、外来ではデイケアを行っており、その他に入院・外来を問わず参加できる院内行事として、運動会・納涼祭・クリスマス会を開催しております。

また、入院生活をしていると実社会とのつながりを持つ機会が著しく少なくなるため、世の中への興味や関心の低下が生じたり、逆に社会生活への過剰な不安を持ってしまったりということが起こり得ます。そこで、今回は「なし狩り」を企画し、久しぶりの外出を楽しんできてもらいました。

このような行事を通じ、気分転換の効果のみならず、患者さんの問題点や意外な能力が発見され、その後の治療をより充実したものにする事も期待できるのです。

(医療部・精神科、行事企画委員会委員長:高橋 祐二)

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