センターについて


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リハセンだより第39号(2008年4月発行)

365日訓練を始めます

所長:千田 富義

リハビリテーションのパワーアップ

センターのリハビリテーション訓練は土曜日・日曜日、祝日を除いた平日に行われ、3連休日、年末・年始など休みが続く日には、臨時に訓練日を増やす体制で進めて参りました。2008年5月1日からこの体制を変更し、基本的には土曜日・日曜日、祝日を含めた365日間訓練を入院中の患者さんに行う体制とすることに致しました。これにより充分量のリハビリテーションが行えるようになります。

種々の効果を期待

訓練効果の後退を防止

月曜日に訓練を始めると、金曜日まで徐々に訓練に慣れ患者さんの動きがスムースになります。しかし、土曜日・日曜日に訓練を休むと、次の月曜日は少し機能が低下します。これを繰り返しながら何週間かかけて少しずつ機能が向上していきます。休日の機能低下を避ければ、機能向上がもっと速くできることになります。読売ジャイアンツ終身名誉監督の長島茂雄さんがテレビに登場し、訓練の様子を映しながらリハビリテーションの経験を話していました。「1日休むと元に戻るのに2日かかる」「リハビリテーションはウソをつかない」。最高の能力を持ったスポーツ選手ならではの発言で、その通りに努力している長島茂雄さんの姿に感動しました。センターでは、長島茂雄さんと同じ思いを持ち、毎日訓練をのぞむ患者さんを支援します。

多彩な訓練が可能

センターのリハビリテーションは訓練室での訓練と病室での訓練を両方重視しています。ゴルフをなさる方ならよくご存じと思いますが、打ちっ放し練習場で行う練習とゴルフコースで行う実践の両方を頑張らないと上達しないことになっています。バンカーや傾斜の処理はゴルフコースで覚えます。リハビリテーション訓練も全く同じで、打ちっ放し練習場に相当するのが訓練室で、ゴルフコースに相当するのが病室です。訓練室で基本的な筋力増強訓練、歩行訓練などを繰り返します。しかし、この訓練だけでは日常生活に直結しない場合があって、病室での実践的な訓練が必要となります。

今回のリハビリテーション訓練の体制の変更により、訓練時間をこれまでより多くすることができます。この訓練時間増加のかなりの部分を病室での訓練を多彩にするために使うことが出来ます。たとえば、立ち上がって椅子に移る動作を訓練室でできても、病室のトイレや食堂の椅子やベッドで行えるとは限りません。それぞれの場面で実際に訓練することが何よりです。また、椅子へ移る動作が日中出来ても朝起きがけにも可能かどうかは別問題です。このように、実際に日常生活で問題となる多彩な活動を丁寧に訓練し、患者さんがいろんな場面で活動を適切に、スムースにできるよう支援します。

訓練効果は証明済み

365日訓練を行うことによって機能改善があるかどうかについて、ある大学のリハビリテーション・センターから研究発表が報告されています。機能改善度が高まったことと、入院期間が短縮したことを述べています。その上で、この訓練方法は、リハビリテーション医療が今後進むべき合理的な方向であると結論しています。

私たちはこのような先行する施設の業績を参考にしながら、秋田県民の方々にもこのようなサービスを提供したいという思いから、種々の検討を加えて実現することになりました。

365日訓練実施に当たって

機能訓練科:理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)より

理学療法室

写真:理学療法室

今年度(6月)から4病棟と5病棟に入院された患者様は、原則として土曜日、日曜日、祝日を含む毎日理学療法(PT)が行われることになりました。それに伴いPTのスタッフも大幅に増える事になり、より一層充実したサービスが皆様に提供できるものと思っております。リハビリテーションの効果を最大限発揮するには、色々な経験を毎日積み重ねていく事がとても大切になります。病院内だけでなく退院後の生活も楽に行えますようスタッフ一同全力でお手伝いさせていただきます。患者様が受けられる理学療法が最大の効果が発揮できますようにこれからも努力して参ります。本年度もよろしくお願いいたします。

作業療法室

写真:作業療法室

新年度からの365日訓練開始にあたり作業療法士の増員が予定されています。リハビリテーション科を担当する作業療法士は、現在までの8名から15名程度で新規体制に臨む事になります。退院後は主婦として復帰される方、趣味を続けたい方、家族との生活を楽しみにしている方など患者さんのニーズは様々です。作業療法士は患者さんの主体的な活動の獲得を支援しています。今回の体制の変更によって、従来以上に患者さん一人一人の個別性を重視した高密度の作業療法ができる環境が整備されることになります。我々作業療法士は患者さんご自身が主体的な活動ができ、充実した生活を送ることができるように、新体制となる「人、時間」を活かす努力を惜しまず支援をしていきたいと思います。春はすぐそこまで来ています。草木が芽吹きはじめています。我々も新たな気持ちで取り組みたいと思います。

言語療法室

写真:言語療法室

言語聴覚部門は、失語症、発声構音障害、摂食・嚥下障害、記憶障害、認知症、聴覚障害、その他のコミュニケーション障害を治療の対象としています。近年では特に摂食・嚥下障害、認知症、脳外傷後の高次脳機能障害の治療がクローズアップされています。これまでの10年間わずか2名の言語聴覚士で評価治療を行ってきましたので、1人の患者様に充分な訓練時間を確保することができませんでした。しかし新年度には4名の言語聴覚士が採用されることになりましたので、県民の皆様に丁寧で充分な治療が提供できるものと考えております。そのために個々の研鑽を積み、また他部門との協力体制を充実させ努力して参る所存です。どうぞよろしく御願いいたします。

回復期リハビリ病棟と終日・連日訓練

副所長(リハビリテーション科):佐山 一郎

リハセンの回復期リハ病棟(脳卒中などで起きた後遺症に対して、生活に必要な能力を回復するためにリハビリを行う病棟です)50床には、年間約200名の患者さんが入院され、集中的・専門的リハビリを受けています。脳卒中発症後の早期治療は安静が第一という考え方が長いあいだ続いてきました。その影響で、患者さんご本人やそのご家族、果ては関係する医療スタッフまで早い時期からの起居動作訓練や日常生活訓練に不安や心理的抵抗がありました。最近、「闘うリハビリ」がNHKスペシャルで放映されました。この番組のお陰で早期のリハビリに対する認識が医療関係者や一般の方々まで大きく変化したことは喜ばしいことです。そうです、脳卒中など、障害の原因となった病気の状態が安定するのに平行して早期のリハビリを効率よく行えば、その効果は絶大なのです。

写真:回復期リハビリ病棟

しかし脳卒中は、加齢や生活習慣による全身病の結果起こっていますので、訓練自体にたくさん危険を伴います。また入院中の病棟生活にすぐに生かせなければ訓練効果も持続されません。患者さんご自身に具体的目標や成果を確認できる場がなければ訓練意欲も持続困難です。こういった条件を満たすために、医師や看護師、訓練士、ケースワーカー、栄養士など、専門スタッフがそれぞれの立場でひとつのチームを作って行うのが医学的リハビリテーションです。主治医を中心に、病棟生活に密着して治療と訓練を行えるのが理想です。朝起きてから夜寝るまで、そして週日・休日関係ないのがリハビリの対象となる日常生活活動訓練です。5月から始まるリハセンの「365日訓練」は、この理想型にまた1歩近づくことを意味します。リハセンスタッフ一丸となってこの理想型のリハビリ医療を展開します。長島さんに限らず、多くの県民の方々がこういった良いリハビリ医療を地元秋田県で享受し続けられるように、なお一層のご理解とご支援をおねがい致します。

シリーズ高次脳機能最終回

高次脳機能障害についてこれまで簡単に紹介してきましたが、障害が直接目に見えないため、なかなか理解競れにくいという問題を抱えています。

高次脳機能障害は、身体の障害を伴わないか、あるいは身体の障害は軽微であり、一見しただけでは判別できないことが多い。そのために、急性期病院における治療終了時には「治癒」したと見なされることが少なくない。就労後、あるいは転職などの環境が変わるときに、始めて作業能力の低下を第三者から指摘され、失職に至ることがある。さらに高次脳機能障害の診断基準が従来は存在しなかった理由もあって、医療機関での適切な診断がなされないまま経過したケースが多い。また、身体障害者福祉法や、障害年金の対象として認知されていないために社会的不利益を受けやすいという特殊性がある。こうした点が高次脳機能障害の今日的重要性の所以である。
(高次脳機能障害ポケットマニュアル、医歯薬出版2006年、8ページより引用)

脳卒中など脳の病気や外傷では、手足の麻痺以外にも、様々な症状が起こることを知っておいていただければと思います。

心の健康コーナー:『心の風邪:うつ病』

その3:うつ病になりやすい性格

今回のお話は、ぜひ部下を持つ立場の方に読んでいただきたいと思います。

うつ病になりやすい性格として4タイプを挙げている学者がいますが、日常で出会いやすいうつ病としては1タイプだけを知れば良いでしょう。

診察をしていて感じるのですが、かなり前から、中年を過ぎた方の軽症うつ病が多くいらっしゃるようです。さらに、最近は、30歳台の若い人も増えているようです。話が散漫になってはいけませんので、ここでは中年の方に限ってお話を進めます。中年になって初めて生じるうつ病の場合、一般に想像しやすい、弱々しくいつも陰気な性格の人がかかりやすい訳ではありません。かえって、几帳面、生真面目で仕事熱心な、考え方によってはサラリーマンの鑑(かがみ)のような人がなりやすいのです。仕事を家に持って帰ってでもきちんとしないと気が済まない。完全にもれなく仕事をやりとげたい。頼まれると断りきれないで隣の分野の仕事まで引き受けてしまう。一緒に仕事をしていく上では頼りになる同僚かもしれません。バリバリ仕事をしている時期にはとてもうつ病になるとは想像できない活力も見せるでしょう。だからこそ、このような人が今までご紹介したような症状を訴えて相談してきたら、「おや、これはちょっと妙だぞ。うつ病ではないか」と考えてください。安易に叱咤激励をするとそれが自殺を誘発することがありますので注意してください。

うつ病の症状が軽い場合は、本人が職場ではそれを隠している場合があります。しかし、家族に連絡してみると、自宅では、どうも最近、妙に元気がない、生気のない顔で横になってばかり居るなどの状態がみられることも多いものです。そのような場合は積極的に精神科受診をすすめたほうがよい場合が多いと思います。本人なり、家の人(夫や妻など)にうつ病を考えて受診してみることを勧めてあげた方が良いと思います。

受診の具体的な手順についてお話しします。まず、内科的に病気が隠れていないか、まず、近くの総合病院などを受診することを勧めてください。時に、内科的病気のために、一見、うつの状態のように見えることもあるからです。内科的に問題が無いのに、元気が無く、本来できるはずの仕事が出来なければ、やはり、うつ病を疑ってみるべきだと思います。お近くの精神科を思い切って受診することをお勧めください。精神科というと「頭が変だと言うのか」と怒り出す人が昔はいましたが、最近はそういう人に会わなくなりました。ストレス社会の今日、精神科といって躊躇(ちゅうちょ)するのは時代遅れです。

なお、受診するときは、奥さん(旦那さん)かあるいは本人の家庭内の生活もよく知っている人も同伴したほうがよいと思います。症状が軽く、本人にそれを隠す傾向があると、本人の診察だけでは分からないことがあるからです。そういうときでも、生活状況を教えてもらえば、見逃さないで済むと思います。最初の診察時は必ず、家族かそれに準じる人が同伴することを強くお勧めします。

編集後記

3月の送別会が終わると、4月は歓迎会の季節です。
今年は休肝日を守ることを目標にします。

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