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「よく働き、よく遊べ」(2011年7月掲載)

2011年7月

岩手県の山田町へ、心のケアチームの一員として行ってきました。町の8割程度が家屋のコンクリート土台だけとなっていました。終戦後の焼け野原のような風景で、土台の枠組みだけがはるか遠くまで続いています。

5月に行ったので、まだ仮設住宅への入居は始まっておらず、避難所に大勢の人がいらっしゃいました。慌ただしいスケジュールで巡回相談を行ってきましたが、被災者皆さんの穏やかでこだわりのない姿勢が印象的でした。

被災者の皆さんから支援を訴える声は聞きませんでしたが、現地を一目みて理解しました。徹底した破壊です。街の大部分が消失しています。あれでは自力のみで復興するのは不可能です。十分な支援が必要です。そのためには何が必要でしょうか。秋田へ帰ってから、何回かに分けて考えてみました。その答えが上記です。「よく働き、よく遊べ」です。

このように言っても内容はわからないと思います。自分で作っておいて言うのも何ですが、わかりにくい標語で語呂もよくありません。少し、説明します。

災害の後の人々の生活は3段階に分かれると思います。第1段階が「命のステージ」で必死になって生命を保つために走り回る時期です。災害後、1週間程度でしょうか。次の第2段階は「暮らしのステージ」になると思います。1ヶ月から数ヶ月後までの間、一生懸命、安定した生活を確保するためにがんばる時期です。その次には、第3段階が待っていると思います。それは「お金のステージ」です。これは、災害によって受けた経済的ダメージを何とか回復しようと地道に努力する時期です。この時期は人により、長さが違い、年単位で延々と続くことになるでしょう。

ここからが本題です。回りくどく書いてきましたが、我々が毎日の生活を続けながら、しかも、確実に被災者の復興に役立つ道はこの第3段階にこそあるのではないかと言いたいのです。第1段階、第2段階は目立ちやすいですし、直接の支援になるので、援助した方の充実感も得られやすいと思います。しかし、直接の援助活動が出来ない我々でも間接的ですが、確実に被災者の皆さんの役に立つことは出来るのです。それが「よく働き、よく遊べ」です。

理屈を説明します。被災者を支援するためには資金が必要です。それは直接の寄付の場合もあるでしょうが、政府を通した税金の形も当然大きな金額となります。そうすると、よく働く、今までよりもほんの少し、数%だけ余計に働く、それを国民皆が行えば国に余力ができ、災害支援もより容易になるのではないでしょうか。それだけで十分に意味のある被災者支援になるのではないでしょうか。付け加えると自粛は世の中を不活発にするのでよくないことだと思います。余暇活動そのものも国全体の活動を活発にするために必要なことです。「遊ぶ」ことでお金を消費すれば、そのお金は誰かの手に渡り、また、他の人の手に渡り、社会を元気づけます。ですから、「よく働く」(報酬のない仕事でも意味があると思います)、そして「よく遊ぶ」、このような発想が今回の災害から立ち直る上で非常に大事だと考えます。

始めにもどります。ですから、私の主張としては「よく働き、よく遊べ」となります。あくまで「よく働き、よく遊び」、そして、「間接的に」被災者の皆さんのお役に立つようにする。皆さんのご賛同、ご協力を期待します。

図:「よく働き、よく遊べ」

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