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今、とんでもない法律案が審議されています(2013年4月掲載)

今、とんでもない法律案が審議されていることをご存知ですか?硬いことばが続きますが、大事なことなのでどうぞ読み続けて下さい。

2013年3月15日に国の法制審議会総会(法律の原案を決めるところ)で刑事法(自動車運転に係わる死傷事犯関係)に関する「要綱案」が採択されました。「特定の病気に罹患していて、その影響により正常な運転に支障が生じるおそれのある状態で死傷事故を起こした場合、15年以下の懲役とする罪を新設する」という内容です。

対象となる病気としては、意識障害を来す疾患並びに統合失調症やそううつ病を挙げています。具体的に言うと、そううつ病の躁状態で気分が浮かれてしまった状態で車を運転した時に重大事故を起こすと、健康な人による同様の事故よりも重い刑罰を受けるおそれが生じるということになります。

しかし、精神疾患と交通事故との因果関係についての科学的評価は存在せず、疫学的調査として公表されたものもありません。この法案は偏見に基づいたものであり、精神障害者への更なる偏見と差別を助長するものであると言わざるを得ません。

精神科の病気の影響に基づいた不幸な交通事故があり得ないとは思えません。残念ながら、ごく少数でしょうが、そのような事故は生じうるでしょう。しかし、病気にかかりたいと思っている人がいるでしょうか。病気の影響により、判断力に支障が出るようになりたいと思う人がいるでしょうか。偶々の不運により精神科の病気にかかり、病気にだまされたために社会的に問題のある行動をとってしまった人達へ、重い刑罰を与えることはどんな意味があるのでしょうか。そのような人達に必要なのは、病気とたたかうための医療と、たたかうことを助けるための福祉なのではないでしょうか。そのような人達を、自ら好んでアルコールを飲んだり違法薬物を摂取したりして車を運転し、事故を起こした人達と同列に扱うのは絶対に間違っています。

この法案がこのまま通ってしまえば、精神障害で苦しんでいる人達、その周囲にいる人達は、よりひどく苦しむことになることでしょう。この問題をこのまま放置してはいけません。この法案の行方を注視し、強く反対の声を上げていかなければなりません。この文章を読んでいらっしゃる精神障害者、その周辺の方、あるいはその他の一般の方々に呼びかけます。このような科学的根拠を持たない、偏見に満ちた法律(悪法と言ってよいでしょう)を成立させてはいけません。断固として反対すべきです。皆様のご理解とご協力をお願いします。

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