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「高次脳機能障害(2)多職種が連携し対処」(2009年3月掲載)
下村 辰雄(リハビリテーション科):秋田魁新報 2009年3月23日掲載
高次脳機能障害の患者は記憶障害や注意障害、自分で計画を立てて物事を実行することができない遂行機能障害などにより、周囲の環境を適切に認知し、自分自身を制御することが難しい。また、程度の差こそあれ、自らの病態に気付かない「障害の自覚の欠如」が見られる。これらが原因となり、社会に適応して生活する上で問題となる情動・行動面の障害がしばしば生じる。これを「社会的行動障害」という。
症状には、依存性・退行(自分でできることでも誰かにしてもらいたがる、甘える)、欲求のコントロール低下(食事時間まで待てない、性的抑制が利かない)、感情のコントロール低下(気分にむらがある、すぐに機嫌を損ねる)、対人機能拙劣(他人を思いやれない、周囲になじめない)、固執性(一つの物事にこだわる、自分勝手)、意欲・発動性の低下(何もしようとしない、何事にも興味を示さない)、抑うつ・感情失禁(ちょっとしたことで泣いたり、笑ったりする)などがある。
情動の不安定、他人への攻撃的な態度が顕著な場合には在宅介護が困難となり、入院加療を要することもある。
社会的行動障害は騒々しい環境に置かれるなど、外部からの刺激に反応して現れることが多い。症状は患者によって異なるものの、その内容や出現する状況は同じで、観察していると個々に特有のパターンをつかめる。症状が頻発すると、その誤った行動パターンを身に付けてしまう恐れがあり、規則正しい生活を送らせるように指導したり、暮らしやすい環境づくりを進めて患者が適応行動を取れるように誘導する。
症状は重複して現れるため、すべての患者に適用できる画一的なリハビリプログラムをつくるのは難しい。そのため、多職種が連携してかかわる包括的なチームアプローチが必要になる。具体的には、作業療法士や心理療法士が認知機能障害の程度の評価と改善を図る認知リハビリを担当。看護師が日常生活で生じている社会的行動障害を評価し、問題行動を取らないように誘導する方法について検討する。また、医療ソーシャルワーカーが患者と家族のかかわり、生活する上で有効な社会資源の活用についての助言などを受け持つ。これらを医師が統合してリハビリを進め、必要に応じて薬剤投与なども行う。
秋田魁新報 2009年3月23日