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「軽度認知症の運動能力 模擬装置を使い判断」(2008年8月掲載)

下村 辰雄(リハビリテーション科):秋田魁新報 2008年8月4日掲載

高齢化が進んだ今、お年寄りの車の運転は珍しくない。警察庁によると、2006年(平成18年)に65歳以上の免許保有者数は1千万人を超えており、その年代の約4割に上る。加齢に伴い、運動能力、動態視力、判断力が低下し、事故の危険性が高まると考えられる。高齢者が加害者となった交通事故は、10年前に比べて65歳以上で約2.1倍、70歳以上では約2.5倍に増加している。

視覚を通して空間の広がりを把握する能力、判断力、注意力、記憶力などの認知機能が衰えた認知症患者は、高齢者の中でも特に事故を起こすリスクが高まる。高齢者に限らないが、認知症患者は同年齢の健常者に比べて事故を起こす割合が2.5倍から4.7倍高いという統計がある。さらに、一度事故を起こし、その後運転を継続していた認知症患者の40パーセントが再び事故を起こしているとの指摘もあり、認知症が患者の運転能力を低下させ、事故を招く危険性を高めることが分かる。

2002年、認知症患者に対して運転免許を停止または取り消す措置が可能になった。その後、2009年までに75歳以上の免許更新者を対象に認知機能検査を導入することが決定。検査結果によっては臨時適正検査を受けることになる。

しかし、ひと口に認知症といっても症状や程度はさまざま。現在、運転にどの程度の影響を及ぼすかを評価する基準などが示されていないため、特に公共交通機関の乏しい地域では運転継続を望む患者と、やめさせようとする家族や中止を勧める医師との間でしばしばあつれきが生じている。また、危険を承知で運転の継続を黙認せざるを得ない事態も起きている。

それでも重度の患者であれば、臨床で用いる認知機能評価や日常生活活動評価などで運転が不可能であることを判断できる。一方、軽度の患者の場合は運転能力を評価する有効な指標がなかなか見当たらない。そこで当センターでは軽度の認知症患者の運転能力を評価する際、コンピューター画面上で模擬運転を行ってもらい、子供の飛び出しなどに対応できるか検査する装置を導入し役立てている。

秋田魁新報 2008年8月4日

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