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「高次脳機能障害(1)分かりづらく誤解も」(2009年2月掲載)

下村 辰雄(リハビリテーション科)/秋田魁新報 2009年2月16日掲載

交通事故による頭部外傷や脳卒中からの回復後、身体的障害がない場合でも認知障害が残る高次脳機能障害。以前は社会的認知度が低かったが、近年、関心が高まっており、マスコミで取り上げられる機会も増えている。

注目されている背景には記憶障害や注意障害、自分で計画を立てて物事を実行することができない遂行機能障害、意欲低下などの社会的行動障害などによって日常生活に支障が生じることがある。しかも、比較的若年者に患者が多く、復学、復職に困難を伴い、社会的影響も大きい。また、この障害に対する福祉政策が整備されていなかったため、十分なサポートが受けられずに「福祉のはざま」に置かれてきたことも関心を高める一因となっている。

患者の家族からは、しばしば次のような切実な声を聞く。「死の一歩手前から奇跡的に回復したが性格が変わり、感情の起伏が激しくなった。少し前の出来事が覚えられず、動作はぎこちなくなって、慣れているはずのこともきちんとできない。この障害は外見からは分かりにくく、公的援助が不十分。当事者とその家族にのしかかる負担や将来への不安はとても大きい」

こうした言葉通り、高次脳機能障害は肢体不自由など誰もが容易に認識できる障害と異なり、一見して分からないケースが多い。医療関係者や福祉関係者でも認識しづらい。そのため、「怠けているのではないか」「人が変わってしまった」といった誤解を受けることも少なくなく、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳、知的障害者が対象となる療育手帳のいずれの交付も受けられない患者が大勢いるのが実情だ。

それらの問題解決に向け、2006年(平成18年)施行の障害者自立支援法で患者への支援が推進されることになった。本県でも支援普及事業が進められており、その一環として市町村や保健所の担当者らを対象にした研修会が開かれるなどしている。

一方、2008年に患者や家族で組織する家族会「ぶりっ子」が設立され、会員の間で相互交流や情報交換が行われている。当センターでは2008年4月に「高次脳機能障害外来」を開設、患者や家族からの相談に応じている。

秋田魁新報 2009年2月16日

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