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あちらを立てればこちらが立たぬ 精神科の薬の効果と副作用の関係について(2014年9月掲載)

一般に精神科の薬は、よく効くことと不愉快な副作用が多いことで有名ですが、今日はそれについて少しご紹介します。

精神科の薬の多くは脳の中の物質の一種である「神経伝達物質」の働きを変化させます。「神経伝達物質」とは脳内の信号を伝える役目の重要物質に当たります。脳の中のある神経伝達物質の働きが過剰になっていれば、それを抑えることにより、働きが正常化するわけです。
これは当然に歓迎すべき事柄ですが、ここに困った問題が生じます。ターゲットにする神経伝達物質が脳の中の一部だけで仕事をしていればよいのですが、あちらこちらで、しかも複数の働きを受け持っていることが多いのです。そのために、ある所では薬により神経伝達物質のバランスが正常化しますが、別の地点では逆に薬がバランスを崩すことが起きます。

少し、具体的に説明します。
幻聴や妄想を消す薬を抗精神病薬と呼びます。この薬は脳内のドパミンという物質を抑える働きがあります。
「図:幻聴・妄想・消失と手のふるえ出現について」のA地点でドパミンが過剰なために幻聴や妄想が生じている場合、抗精神病薬を服用してもらうとA地点のドパミンは正常化し、幻聴や妄想が消失します。ところが別のB地点ではドパミンが体の動きを制御するために使われているため、B地点の正常なドパミンを薬が下げてしまうと、B地点ではドパミンの働きが下がりすぎて、結果として副作用の手のふるえが出現したりするわけです。

図:幻聴・妄想・消失と手のふるえ出現について
図:幻聴・妄想・消失と手のふるえ出現について

このように、精神科の薬の副作用の一部はターゲットの神経伝達物質が脳の数カ所で別の目的で使われている事、薬は脳内全体に行きわたる事などから、効果を出す作用が同時に副作用を出す作用になっていることが多いのです。ですから、「あちらを立てればこちらが立たぬ」で薬の調整に手間取ることが多い実情があります。

ただし、だからといって、ただ我慢するのではなく、副作用が出たら、必ず御連絡やご相談下さい。

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