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抗うつ薬が効いてくるまで(2010年4月掲載)

2010年4月

最近はうつ病の患者さんが急増していると言われます。実際に、外来へいらした患者さんがうつ病と診断されるのは日常茶飯事です。うつ病と診断した後は、当然、うつ病がよくなる薬(抗うつ薬)をさしあげます。

この抗うつ薬を服用する時のポイントがありますので、主な点を3つ、ご紹介したいと思います。

まず、副作用が肝腎です。抗うつ薬には当然、副作用があります。最近よく使われるSSRIというタイプの新型の抗うつ薬では、初期に吐き気や食欲不振が一過性にでることが多いようです。昔から使われてきた3環形抗うつ薬というタイプでは口の渇き、ねむけなどが出やすい傾向にあります。これらの副作用は確かに不愉快なものです。しかし、ここで大事なことは死んでしまうような激しい副作用は通常は生じないということです。ここにあげた以外にも、不愉快な副作用が個人の体質の差や年齢などにより、いろいろ出ることがありますが、普通の条件では危険な副作用はなかなか考えにくいところです。また、日本では多くの種類の抗うつ薬が利用可能です。副作用が無視できない時には、主治医の先生に相談すれば他の薬に変えることを検討してもらえることがほとんどです。

次に、抗うつ薬では効果よりも副作用が先行するのが普通だということです。のみ始めた時に副作用がまず出てなかなか効果が現れなければ、やめてしまおうと思うのは人情です。しかし、初期の副作用は数日または1週間から2週間でおさまり、その後、遅れて効き目が出てくることがよくあります。中止するべきか否かは病院と相談してから決めるべきでしょう。

3つ目として、精神科のお医者さんが薬を選んでいくパターンについて知っておいたほうがよいでしょう。一般的にいって、抗うつ薬では、軽い薬は作用も副作用も軽く、強い薬は両方とも強い傾向にあります。そうすると、軽い薬で効く人に強い薬を無理してのんでもらうことは馬鹿げています。ですから、多くの場合は、はじめは弱い薬で効くかどうか試してみて、効きが悪ければ、少しずつ、強い薬に切り替えていくことになります。いろいろな薬を試してみて初めてその人に合う薬が見つかることが当然あるわけです。はじめにのんだ薬がたまたま合わないために、合う薬が自分には無いと思ってしまう人が時にいらっしゃるようですが、早合点せず、まず、医師に相談することを強くおすすめします。

うつ病の多くは自分に合う薬が見つかると非常によく治るものです。もし、ここに書いたようなことがご自身あるいはご家族について思い当たったら、あきらめずに、積極的に医師へご相談下さい。

図:抗うつ薬が効いてくるまで

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