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「双極性うつ病」のお話(2009年11月掲載)

2009年11月

最近、「双極性うつ病」についての関心が少しずつ高まっています。耳慣れない言葉だと思いますので、少し説明します。うつ病という病気は元気が出なくなる病気ですが、その反対に元気が出すぎる病気があります。躁(そう)病と言います。また、同じ人物に元気が出なくなる状態(うつ状態)と元気が出すぎる状態(躁状態)の両方の症状が出る場合があります。これを躁うつ病(最近は双極性障害と呼ぶことが増えています)と呼びます。この躁うつ病の人の場合に「双極性うつ病」が問題になります。

純粋な「うつ病」(単極性うつ病と呼びます)の人へ使用する薬物と「双極性うつ病」の人へ使用する薬物とでは、少し使い方が違います。ところが、躁うつ病の人で、初めの数年間は主にうつ状態の症状だけがでたために、「うつ病」としての薬の治療を受けてしまう場合があるのです。当然、これでは困りますから、この2つを出来るだけ早期に見分ける必要が出てきます。そのために、躁うつ病の人のうつ状態の時の病状を「双極性うつ病」と最近、気をつけて呼ぶようです。

もう少し、くわしく言うと、単極性うつ病の場合は通常の抗うつ薬が有効ですが、双極性うつ病に対しては、抗うつ薬だけではなかなか効かなかったり(効く場合もあります)、躁とうつがめまぐるしく入れ替わる急速交代化という現象を引き起こしたりすること等があります。双極性うつ病の場合は、通常の抗うつ薬とは違う気分安定薬という薬を主に使う必要があります。だから、単極性うつ病と双極性うつ病をキチンと見分けることが大事になりますので、「双極性うつ病」を見逃さないようにという意味で関心が高まっているようです。

さて、どのような場合に「双極性うつ病」を疑うべきでしょうか。大雑把に言うと、本来は元気で活発な人が、若いうちにうつ病となり、通常の抗うつ薬がなかなか効かないでうつの症状が長期に続いたり、家族に躁病の人がいる場合は、躁病の症状がなくても、もしかしたら双極性うつ病の可能性はないかと疑ってみる価値があります(単極性うつ病である可能性も当然あります)。特に軽い躁の症状は見逃されやすいので、調子が良すぎる時期が数週間から数ヶ月あったかどうか(家族が気づくことが多いようです)を注意深く確かめるべきです。近くに、このような病状でお困りの方はいらっしゃいませんか?

長いお話になりました。今回はかなり、細かなお話をしてみました。ご理解いただけたでしょうか。

図:「双極性うつ病」のお話

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