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「スマホ」と「テレビゲーム」について考える(2015年1月掲載)

最近は当たり前の事になってしまいましたが。機械の画面を見つづけたまま、歩いている人が多くなりました。子どもはいわゆるテレビゲームで、大人はスマホです。前を見ないで歩いているので、衝突しそうになって怖い思いをしたりします。

これは精神科医の立場から考えると「自閉(自分の中に閉じこもる事)」と「逃避(現実から逃げ出す事)」の心理状態にあるのかなという事になります。現実がつらい(つまらない?)ので機械の中の「仮想空間」の中に逃げ込んで精神の安定を図っているようにも見えます。もっとも、ゲームはともかく、スマホではいわゆるネットの人間関係で悩む人も多くなっているようですが。

こう書くと、「自閉」と「逃避」が悪いと非難していると受け取られかねませんが、そうではありません。昔から、「自閉」と「逃避」の心理は人の健康な精神活動の一部としてあったと思います。「夢見る少女」などの文学的表現があるように、自らの空想の世界にひたり楽しむ事は子どもにとっては当たり前であり、大人が楽しんだ幻想文学などもその仲間のように思えます。自閉と逃避そのものが異常とは思いません。

私がここで言いたいのは、本来、人が持っている自閉と逃避の心の仕組みが、機械により容易となり、拡大し、画一化しながら暴走傾向にあるのではないかという事です。精神活動のエネルギーの多くがそれだけで消費されてしまっている、それが「不自然」だと思います。

この傾向は、少し人の心の健康を損なう方向で働いているように思います。特に子どもの心の成長に好ましくない影響を与えているのではと心配します。具体的に言うと、子どもの精神生活の多くがゲーム内の「仮想現実」に占められるため、現実生活を通して学ぶべき、個人間の交渉技術や集団内で立場を確保する技術などの「人間関係に関する技術」が十分に発達しないまま成長してしまうのではないかという事です。

社会全体が仮想空間化していく現在、これらの現象全体をどのように受けとめるべきか、一精神科医である私にはわかりません。ただ、個人の精神の健康に関わる部分に関しては、それなりに分析する事によりそれと関わっていこうと、不思議な困惑と不安を感じながらぼんやりと考えて毎日を過ごしています。

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