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通ってしまいました(2013年12月掲載)

「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が、2013年11月5日に衆議院本会議で可決されてしまいました。とんでもない事です。

この法律が作られる目的は、「悪質かつ危険な自動車の運転により人を死傷させた者に対する新たな罰則を創設するなど」にあるようです。

主な目的はアルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な行為を抑止しようとするもののようです。私はこれには賛成です。その結果を知りながら、無責任にアルコールや薬物を摂取し、その結果、重大な事故を起こすことは決して許されるものではありません。

しかし、その他の条件が問題です。上記の状態以外に、特定の病気を持ち、上手く運転ができない「おそれ」がある状態で運転し、病気のために正常な運転が出来なくなり、人を死傷させた場合も同様に罰するとされています。この部分が非常に大きな問題を含んでいます。

アルコールや薬物の摂取は、本人がその結果を知りながら自らの意志で行う行為です。その責任を追及するのは当然でしょう。しかし、統合失調症や躁うつ病にかかることは全く事情が違います。好きこのんで、これらの病気にかかりたいと思う人はいるでしょうか。いるはずがありません。自分でもどうしようもない経過で自然にこのような病気にかかるだけです。しかも、これらの病気にかかると自分が病気であることが理解出来なくなることが多いのです。病気の症状に振り回されて客観的な現実的判断能力が一時的に無くなってしまい、自動車を運転する人も中にいるでしょう。しかし、それは本人にもどうしようもない事なのです。

運が悪く、偶々病気にかかり、病気の症状として現実的判断が出来なくなり運転し、事故により人を死傷させた場合、本人を罰すべきでしょうか。憎むべきは病気そのものであり、不運にしてそれにつかまり、悪い結果を起こしてしまった人達を、刑罰により懲らしめることにどんな意味があるのでしょうか。反省しても病気は治りません。第一、悪いことを考えた訳ではないので反省のしようがありません。彼らに対して必要な者は刑罰ではなく、手厚い治療、看護、援助なのではないでしょうか。この法律を、このまま施行させてはいけません。十分な修正が必要です。このような、科学的事実を吟味せずに、一方的な思いつきにより作られた法律を実施することは文明国としての日本を否定することになります。これからも、この法律の施行に対して、断固、反対していかなければなりません。

法律は人々の不幸を減らすために作られ、用いられるべきであり、人の不幸を増すためのものであってはならない。私は、強くそう考えます。

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