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神経伝達物質とは何か?(2014年7月掲載)

前回のお話が盛りこみすぎでわかりにくかったという感想を頂きました。数回に分けてもう少し詳しく部分、部分を解説したいと思います。

今回は、まず、神経伝達物質について説明します。この物質(1種類ではありません。多くの種類があります)の体の中での役割を理解するためには、脳における信号(情報)の伝わり方を理解する必要があります。

脳は一種のコンピュータのようなもので人の体の中で複雑な情報処理をしています。それを構成する基本的部品をニューロンと呼びます。脳内の情報処理はこのニューロン同士が互いに信号をやりとりして行われます。

この際、一つのニューロン内における信号の伝達はイオンの交換による電気的流れが生じ、ニューロンの端から端まで信号が伝わります。ところが、ニューロンの先端まで信号が来ると「オッ、信号が来たな」ということで先端の部分からある種の化学物質が分泌され、次のニューロンの表面まで流れていき、その表面にとりつきます。そうすると、次のニューロンが「おや、仕事だ」とイオンの交換を始め、次のニューロンの先端まで電気的流れが生じて信号が伝わってきます。

図:ニューロン内における信号の伝達

このような仕組みがあるので、この神経伝達物質は脳内の情報処理過程で非常に重要な任務を担っていることになります。

また、精神科の病気の症状の一部はこの神経伝達物質の働きが乱れたために起きることがわかってきています。例えば、うつ病のかなりの部分ではセロトニンやノルアドレナリンという神経伝達物質の働きが弱まっているとされます。統合失調症の幻聴や被害妄想はドパミンという神経伝達物質の働きが強くなりすぎることと関係するようだということがわかっています。

ですから、精神科の薬はこれらの神経伝達物質の働きを調節する作用を持つものが多く見られます。前回もご紹介したようにうつ病の患者さんではセロトニンやノルアドレナリンの働きを強める薬(抗うつ薬と呼ばれる薬の一群)、統合失調症ではドパミンの働きを弱める薬(抗精神病薬と呼ばれる薬の一群)がそれに当たります。

次回はこれらの薬を中心に薬の作用と副作用の関係について、少しご紹介したいと思います。

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