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うつ病の人への「励まし」について(2010年11月掲載)

2010年11月

メンタルヘルスの常識について、時々、一般の人が誤解している事柄があります。その中の一つに、「うつ病の人を励ましてはいけない、危険である」という「誤解」があります。正確にいうと、あいまいな形で言葉が一人歩きしているというべきだと思いますが。このためか、患者さんの上司、同僚の方からどう接すればよいか困ってしまうなどと相談される場合もあります。

具体的にご説明します。うつ病の人への「励まし」、「激励」の是非を考える場合はその中身に注意する必要があります。おおざっぱに言うと、本人の苦痛を減らし、希望を与えるような「暖かい励まし」は本人のためになりますが、叱りつける「叱咤激励(しったげきれい)」はきわめて有害です。

うつ病の症状のうつ状態とは、わかりやすい表現をすると脳の中の活動エネルギーがギリギリまで枯渇し、極端な不足状態になったようなものです。そうなると、患者さんは、重ぐるしい独特の苦痛を味わい続けることになりますが、同時に弱気になり、多くの場合、自分自身を責め続けるようになります。

このような病状の人にもっと努力をするように要求すれば、患者さんは懸命の努力を続けてエネルギーをすり減らし、病状をより悪化させることがあります。また、自分を責める傾向の症状がでた患者さんに「おまえの考えは甘い!しゃんとしろ!」と叱りつければ、患者さんはより自分を責めて死を考えるかもしれません。当然、このような接し方は行ってはいけないことになります。

それに対して、患者さんが孤立しないように、時々(1週間に1回ぐらい)「無理をしてはいませんか」などと声をかけてあげたり、「十分に回復してから頑張ってもらえばそれでいいですよ」と「暖かく」励ましてあげたりすることは普通、患者さんの苦痛を減らすことにつながります。

時々、見かけることですが、とにかく励ましていけないと同僚や上司が患者さんを遠巻きにしてしまうために、患者さんが職場で孤立してしまうことがあります。それでなくても、苦痛を味わい、絶望にかたむきがちな心境におちいった人を孤立させることは避けるべきです。職場にうつ病の人がいる立場の人は、「励まし」の中身に十分に注意して患者さんが孤立しないように「暖かく」見守ってくださるようお願いします。

図:うつ病の人への「励まし」について

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