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抗うつ薬が効いてくるまで(2010年12月掲載)

2010年12月

今回は、精神科医師が、通常、うつ病の方に対して抗うつ薬の種類と量をどうやって決めていくかについてお話しします。現在は、多くの、しかも有効な抗うつ薬が利用できるようになりました。そのために、抗うつ薬を差し上げる時も一定のパターンが出来てきたと思います。それは「副作用の弱い抗うつ薬から処方する」というパターンです。というのは、効き目の強い薬は副作用(ねむけ、口のかわき、便秘、(人により)たちくらみ、尿が出にくいなど)も強いからです。弱い薬でよくなる人にわざわざ強い薬を出して副作用を我慢して服んでもらうのは馬鹿げたことです。ですから、通常はSSRI(エス・エス・アール・アイとそのまま読みます)という副作用が弱い割(吐き気、食欲不振は少し出やすいようですが)にかなりよく効くタイプを、まず差し上げることがほとんどとなりました。具体的にはパキシル、デプロメール(ルボックス)、ジェイゾロフトなどの薬です。これらの薬を初めは少量から処方し、副作用が出ないことを見定め、必要な人には少しずつ、増やしていく、このように薬を調整していく精神科医師が多いと思います。 一定量のある薬が効くかどうか確かめるために数週間はかかります。合う薬が見つかるまで数ヶ月かかる場合も時々あります。このような場合、人によっては、なかなか薬の効果が出ないので「薬では治らない」と思い込んで薬をやめてしまい、合う薬が見つかれば病気をよくすることが出来るのに、せっかくのチャンスを逃してしまう人も時にいるようです。もったいないことです。ですから、はじめにもらった抗うつ薬がなかなか効かないからといってすぐにあきらめて通院をやめないでほしいのです。自分であきらめてしまわないで、「今は副作用がこれ位ある、効き目は少し」とか、感じていることをそのまま教えていただきたいのです。そうすれば、医師の方も、「薬を変えればもっと効きそうだが、これこれの副作用が出る可能性がある」などと説明できます。今、飲んでいる薬よりももっと薬に立つ薬をさがしてもらえるかもしれません。あきらめる前に必ず相談してみる、この事を強くおすすめします。もっとも、最近は精神科の診断基準に少し混乱が生じているためか、お薬ではなく、ライフスタイルの工夫などが必要な方へ、気軽に抗うつ薬を処方してしまう残念なケースも少し出てきているようですが。

図:抗うつ薬が効いてくるまで

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